転職者を支えるための制度として、国は「再就職手当」を準備しています。
以前の職場を辞めた後、新たに希望の職場を見つけることができれば、ぜひ再就職手当をゲットしましょう。遠慮する必要はありません。「祝い金」感覚でハローワークから貰ってください。
そもそも「再就職手当」って何?
概要から見ていきましょう。「再就職手当」とは、何か。
これは、失業保険の受給期間を残して、早期に就職した場合に支給されるお金です。具体的には、基本手当(失業保険のことです)の受給期間、3分の1の日数以上を残して新しく就職した際に、国から出ます。
では、具体的な支給条件と、額についてはどうなっているのでしょうか。
支給条件
失業保険の支給残日数が3分の1以上ある(就職日の前日までカウント)
勤務期間が1年以上になると確実であること
7日間の待機を終えて、就職する場合であること
離職理由によって基本手当給付制限を受けている場合は、待機満了日後1ヶ月間について、職安や、または許可・届出のある職業紹介事業者の紹介で就職したものであること
以前の会社に再雇用されたものではないこと
過去3年以内に再就職手当、あるいは常用就職支度手当を受けていないこと
受給資格が認められる前から採用が決まっていたものではないこと
雇用保険の被保険者になる仕事であること(例外あり)
以上、8つの条件があります。
見た目は複雑ですが、「一般的な就職なら大丈夫」というざっくりとした理解でも問題はないでしょう。ただし、注意したいのは、「1年以上安定的に雇用されること」が条件になっている点です。
つまりは、主に正社員として再就職する際に支給されることになります。パートやアルバイトの場合は、「就業手当」が出るので、そちらを利用した方がいいでしょう(これについては後述します)。
支給金額
計算式は簡単です。再就職手当の支給金額は、次の通りとなっています。
基本手当の日数を3分の1以上残して再就職する場合…残りの保険の50%
基本手当の日数を3分の2以上残して再就職する場合…残りの保険の60%
これを一括で貰えるわけです。
しかし、ここで賢い頭脳の持ち主には、こんな疑問も浮かぶはずです。
「それなら、失業保険を貰い切ってから再就職した方が得なんじゃないか?」
では、そのあたりの真相は、どうなっているのでしょうか。
お得なのは「再就職手当>失業保険」
失業保険は、人によって異なりますが、大体は以前の給与の4割~8割程度。
それが働いていた日数に準じて支払われることになります。再就職手当は元の給料の4割~8割の、さらに50~60%というわけですから、「貰える金額が少なくなる!」と、一見思われますね。
しかし、実際に就職してもらえるお給料を考えると、断然再就職手当の方が得なのです。
たとえば、次の条件で試算してみましょう。
再就職手当と失業保険の比較シミュレーション
基本手当日額5000円
給付期間90日
30日目で月給30万円の会社に就職した場合
「再就職手当」を貰ったら…
5000円×30日×60%=90,000円
ここに1ヶ月分の給料、600,000円が入って、合計690,000円!
就職せず「失業保険」を全額受給したら…
5000円×90日=450,000円
このケースだと、3か月で24万円の違いが生まれます。
もちろん、「働かずに90日で45万円も貰えるなら、その方が精神的に得」という考え方もあるでしょう。
しかし、基本的に失業保険は一時しのぎものですし、受給期間の終了間際には不安も強まります。「こんなことをしていていいのか」と思うより、再就職手当を貰って、かつ、働いて毎月お給料を貰う方が、結局は精神的にも楽なのではないでしょうか。
自己都合で退職した場合の再就職手当
いわゆる「一身上の都合」で会社を去った場合でも、失業保険、また再就職手当を受給することはできます。
しかし、自己都合退職者の失業保険には、3か月の給付制限がつくのです。そして、受給が認められても待期の7日間が過ぎ、その後の1カ月間はハローワークで紹介を受けて採用された場合のみ、再就職手当が出るという仕組みです。実際には貰えるまでに無給料の状態が長く続くので、場合によってはアルバイトも考えてください。
「就業手当」について
では最後に、アルバイトの話が出たついでに、「就業手当」のお話です。
前述の通り、失業保険の期間を残して、次にアルバイト、パートをすることになった場合にも「再就職手当」ではなく、「就業手当」が出ます。この計算式は、次の通りです。
基本手当日額×30%×就業の日数(契約期間の日数)
ただし、就業手当の上限額はかなり低めです(具体的には年齢ごとに毎年若干上下するのでご自身でお調べください)。もっとも、そのアルバイトや賃仕事でどれだけ多額を稼いでもそのお金は保証してもらえるので、「お小遣い感覚」で考えれば嬉しい制度です。
注意したいのは、1年以上の雇用が見込まれるのであれば、圧倒的に「再就職手当」の方が得であるという点です。基本的にはバイトでなく、正規雇用を目指したいものですね。