経済ニュースを読んでいると、頻繁に「GDP」という言葉が出てきます。
「GDPが高ければ国の成長度が高い」ということはわかりますが、このGDPはどのように計算しているのでしょうか。また、最近では「GNP」をすっかり見かけることはなくなりましたが、なぜなのでしょうか。GDPを巡るあれこれをお伝えします。
GDPとは
GDPは、英語のGross Domestic Product。日本語訳すると「国内総生産」という意味です。
その期間内で発生した「付加価値」を数値にして発表しています。絶対的評価で「GDPが5%超えたら成長している国だね」という使い方もしますが、多いのは「前年の同じ時期と比べてGDPが〇%増(減)」や、「日本のGDPは〇%。対する中国のGDPは〇%」という使い方の方が馴染みありますね。
「付加価値」とは?
それでは付加価値とはなんでしょうか。
極めて分かりやすく定義すると、付加価値とは「売上から(その売上をつくるための)原価を引いたもの」です。リンゴを栽培している青森県のAさんのお仕事で説明します。
Aさんは1年間リンゴを栽培して、年間1,000万円分を出荷しています。ここから
リンゴ栽培の諸費用(設備費・水道光熱費・運搬費など)
Aさん農家の人件費(Aさん自身の人件費、職員の人件費)
リンゴを東京まで運ぶ運搬費(Aさんが負担すると仮定した場合)
など、「Aさんのリンゴを生産するために生じた費用すべて」を引きます。これがAさんの「利益」であり、Aさんのリンゴ栽培事業による「付加価値」となります。
このような経済活動は、何も企業だけとは限りません。
Aさんの奥様は家事をしてAさんを支えていますが、夕食を作るのにも「原価」があり「人件費」がかかります。また、Aさんのリンゴを売れるようにするため青森県では行政一体となって「青森のリンゴは美味しいよ」と宣伝していますが、ここにも「原価」と「人件費」がかかっています。
また、Aさんのリンゴがとても人気で、アメリカに輸出するとしましょう。
港へ運搬して、船に載せる。ここにも「原価」があり、「人件費」があります。運搬するトラックにも購入費・ガソリン代などの「原価」があり、運転手の「人件費」があります。
この企業・家計・政府。そして輸入輸出の動きを統計した「外国」の、日本すべてで行われている付加価値の合計。これが日本国内すべての生産なので「国内総生産(GDP)」となります。
GDPはインフレ(物価上昇)の調整を行っていない「名目GDP」と、調整を行った「実質GDP」があります。
GDPはどうやって計算するの?
それではGDPはどうやって計算しているのでしょうか。家計や政府の活動もカウントするとなると、さぞ難しい公式でもあるのでしょうか。
答えは、残念ながら「明らかにされていない」です。
日本では内閣府が統計のうえ、速報値と改定値を発表しています。そして驚くべきことに、GDPは各国で計算方法が異なるようです。更に正確に書くと「計算方法が公開されていないので同じかどうか定かではない」ということです。
某国のGDP速報が発表された時に、インターネット上で「計算方法は正しいのか」という意見があがったのは、このような不透明さが背景にあるのですね。
GDPとGNPの違い
以前は、GNPが経済活動をあらわす第一の指標だったのですが、時代が変わり「外国で経済活動をする日本人」や「日本で事業をする外国企業」が増えてきました。
これを「日本や外国の付加価値とするのはおかしい」という流れになり、代わりに「日本国内で行われた経済活動の統計」として、GDPが広く使われるようになっています。
今後は、よりGDPの存在感が高まっていきそうですね。
日本のGDPは?
それでは日本の、最新のGDPを確認してみましょう。
2014年度の年次GDPは名目GDPで490.8兆円。実質GDPは525.9兆円。前年比は名目で1.6%ですが、実質は-0.9%となっています。日本は2010年から僅かながらも実質GDPが0以上になるプラス成長を継続してきたものの、昨年は0を割り「マイナス成長」となってしまいました。
まとめ:政府はGDP600兆円を目指している
2015年に自民党総裁に再任された安倍晋三内閣総理大臣は、新たな経済政策「新3本の矢」で、「GDP600兆円を目指す」と発表しました。
このGDPは「名目GDP」のため、現在の490兆円から20%以上も上昇させる挑戦的な目標です。達成時期や具体的施策を定めていないため、詳細はこれからになりますが、日本の更なる成長を示す数字の根拠を理解しておきたいところですね。
皆様が生まれた頃の日本。そして、皆様が好きな国のGDP。インターネットで検索するとすぐに出てきますので、一度調べてみてはいかがでしょうか。