2015年11月22日、大阪にて大阪府知事選挙大阪市長選挙が行われ、いずれも「おおさか維新の会」公認候補が当選しました。これにより、一度住民投票で否決された大阪都構想が再び机上に乗り、議論が進むことになります。

ところで、都構想は賛成派反対派組み合わせのうえ反対派が勝ち否決されたはずなのに、約半年後に「再び都構想を」と言って、はたして受け入れられるものなのでしょうか。

ここでキーワードとなるのは「大阪会議」です。

「大阪会議」の頓挫

まず、2015年5月17日に行われた「第一回」都構想の賛成派と反対派の主張を見ていきましょう。賛成派が(当時の)維新の党、反対派が自民党などです。

賛成派
大阪府と大阪市の様々な二重行政を失くし、効率化するには「都構想」が必要!

反対派
「都構想」が多額の税金がかかり必要ない!代わりに大阪府・大阪市・堺市が包括的に行政問題を解決する会議を発足させる!

この論点のもと議論を戦わせ、辛勝ながら反対派が勝利しました。真偽のほどは定かではありませんが、勝利した自民党側に年配の支持者が多かったことから、「若者が投票しなかったことが原因」という指摘が相次いだのも記憶に新しいところです。

それでは、そのあと「大阪会議」はどうなったのでしょうか。テレビであまり聞いた記憶がありませんね。

実は、大阪会議は頓挫していたのです。

7月24日に第1回目が開催された大阪会議は、議事進行の停滞が目立ちました。会議の運営力が低かったのか、それとも参加者が恣意的に邪魔をしていたのかは、立場により言っていることが違うのでわかりません。そして、大阪会議の設立を進めた都構想反対派が「この会議は意味がない」と主張するようになり、次々と欠席。定数要件を満たさないようになってしまいました。

そこで、「代替案がまったく体をなさなかったのだから、再び都構想を住民に問う!」という機運が高まったのです。

たとえば、ひとつの会社で革新的なグループが中心となり、「会社のこの制度を変えよう!」と起案しました。一方、それまでの経営を担ってきた保守派は、「それはお金がかかる。代わりにみんなで話し合おう」と主張した。

これが都構想を巡る5月の住民投票です。
そして、社員総会で保守派の述べた「話し合いの場」は頓挫した、という構図です。

再び都構想が争点になった大阪W選

そのうえで、やはり都構想を進めなければ大阪は変わらないのか。それとも都構想以外の解決手段があるのではないかを争ったものが昨日の選挙でした。住民投票の結果を首長選挙で争うことは違和感がありますが、「どちらの考え方を持った方が今後のハンドルを握るのか」ということですね。

即日開票の結果、大阪府知事選、大阪市長選ともに、大きな差をつけておおさか維新の会公認候補が勝ちました。つまり、「やはり都構想に向けて進んで行こう」という考えが、大阪府民及び大阪市民に歓迎された、ということが言えます。

それでは今後、どのような流れになるのでしょうか。

再び都構想の是非を問う住民投票の開催へ

大阪知事選、大阪市長選ともに都構想推進派が勝利したことにより、再び都構想の是非を問う住民投票が開催される運びになるでしょう。ただ、前述した大阪会議が頓挫したことにしろ、前回の住民投票は2015年5月という、まだ「つい、こないだの話」なので、住民投票という形が妥当なのかは、見極めていくことになりそうです。

また、今回都構想を推進していたおおさか維新の会側は国政における、政権与党に使い方々が多数いる、とも言われています。来年2016年には、3年に一度の国政選挙である参議院議員選挙が行われます。

「大阪府」としての限定された動きになるのか、国を巻き込んで、「地方自治の形を変えましょう」という動きになるのか、選挙の終わったこれから、大きな流れが見えてくるでしょう。参議院選挙を経て、再度流れを見てから大阪の具体的事例をジャッジする、という構図も考えられます。

「ポピュリズム」が遠い今回の議論

ポピュリズムとは、大衆に迎合して人気を煽る行為のことを指します。

これまで政治は「僕らが市民(区民)の味方だ、相手は敵だ」と声高に叫んだ方が勝ちという部分がありました。今回の勝利側となった側の「最高顧問」である現職の大阪市長も、彼に賛成派・反対派をかまわず「大衆に伝える力が強い政治家」と評されています。

ところが、今回は都構想への賛成派も反対派も、それぞれの論点が大阪にとって必要なのか、不必要なのかを論じている。とても素敵なことです。「話している内容はよくわからないけど、相手側は嫌いだ」ではないところ、民主主義の国として誇るべき形だと思います。

大阪都構想は今回の結果を受けて、「どのようにして推進していくか」の次の章に入りました。

今回の議論をきっかけに「住民ひとりひとりが話し合うことの風土」がしっかりと醸成され、次の場に続いていくことにも期待したいものです。

執筆者

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■金子ちえ
金子ちえ
21女/金融系企業勤務/
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