レンタルビデオ店で借りたDVDやCD、期限までに返すのは常識ですよね。

もし、延滞してしまったときには、当然その分の料金も支払うのが一般的です。

しかし、この「延滞料金」が高いと思っているのは、わたしだけでしょうか? 1日遅れただけで200円とか、そんな額を取られてはたまりません。まとめて4~5本借りて一週間も延滞してしまったら、もう凄い額に膨れてしまいます。「返さなくちゃ」とは思いながら、「でも、今返したらヤバいくらい高いし…」と二の足を踏む方も多いことでしょう。

ただし、あまり知られていませんが実はこの延滞料金には、「時効」があるのです。

延滞料金の時効は1年!~支払義務がなくなるかも?

時効を主張すれば、延滞料金を支払う必要はなくなります。

民法174条第5号を見てみましょう。「動産資料、ビデオ・CDのレンタル料」に関しては1年で請求権が消滅すると、明記されています。これは、れっきとした「法律」です。憲法に次いで強い効力を持っています。

つまり、いくらお店が、「1年以上経っても延滞料金はなくなりません」ということを規約に書いていても、これは無効です。絶対的に無効!

つまり、1年経ってから返しにいけば、お店側としては、延滞料金を請求することはできないのです。

「支払え」と強く迫られても、「時効です」と言えば、決して受け入れざるを得ません。もちろんこれは「人としてどうか」という行為ではありますが、まっとうな権利です。

借りた物は期限までに返すのが常識――とは、最初にも触れた通り。

「時効です」と何食わぬ顔で返しにいくのは、少々見苦しいのは確かでしょう。しかし、現実的に何百倍にも膨れ上がった延滞金を支払うのは難しいはずなので、奥の手として頭の片隅に覚えておいてください。

延滞料金は本体価格までしか請求できない?

時効の話からは少々それますが、延滞料金に関しては、お店側から請求されたすべての額を支払う必要はありません。

これは「消費者契約法」によって、そう決められています。

通常、DVDやCDの値段は数千円程度です。何十日も延滞すると、場合によっては延滞金が数十万円に上ることもありますが、これは定価の何倍にもなります。「延滞料金は支払うけれど、定価を超える分については承服できない」という考えだってあり得るでしょう。

「消費者契約法10条」を確認してみましょう。

ここでは、消費者の利益を一方的に害する規定は無効とされる、と決められています。定価の何十倍にも膨れ上がった延滞金は、会員(消費者)に過大な不利益を与えるものなので、定価以上の部分は無効になると解釈できるわけです。つまり、レンタルショップとしては商品の定価までしか請求できません。

「いや、そのDVDが期限までに返却されていれば、別のお客さんに貸すことで、また別の利益があったはずだ。その分まで、延滞者には責任を持って払ってもらいたい」と主張してくるお店もあるでしょう。

これに関しては、正当な訴えです。しかし、それがまさか「数十万円」を超えることはないでしょう。

合理的に考えて、借りた側としては「お店が通常得られたはずの利益」を賠償すれば、それ以上は支払義務なし、となるのが筋というものです。あくまで、「**万円の延滞料金」については、全額を支払う必要はないのです。

時効の話と共に、少々消費者にとって甘すぎるという風にも感じられますが、お店としては、定価と損害分に関しては支払うと言ってくれる利用者は、まだ良い方でしょう。計画的に1年返却せずに、時効を振りかざす会員よりは、ずーっとマシに思ってくれるはず。

よって、延滞金支払の意思はあるけれど、全額は無理、という場合は、

「この商品の定価と、損害分についてはお支払します。すみませんでした」

と頭を下げてください。そうすればお店も、「はいはい」で許してくれる可能性もあります。

時効援用してもお店からは締め出される?

セコいようですが時効の知識を仕入れて、実際にレンタルショップの延滞料金を踏み倒した(正しくは、「法的に無効に持ち込んだ」)という方も少なくはないようです。

しかし経験者の話を聞いてみると、「支払い義務はなくなったけど、もう二度と借りられなくなった」という後日談はあります。つまり「入店禁止」「利用禁止」に追い込まれるわけです。

これに関しては、もうアレコレ言ってお店と戦う必要もないでしょう。

実際、レンタルビデオショップなんていくらでもあるし、今はネットでも便利に借りられる時代なので、特に近郊の一店舗にこだわる必要はありません。何より、「時効だから支払いません」といったお店に、その後もあつかましく顔を出して利用する人はいないでしょうけど…

私たちは日々、法に縛られて生活しています。

いつも法には窮屈な思いをさせられている代わりに、たまにはそれを狡猾に利用して時効援用してもいいじゃないか――という考え方もあるでしょう。

ただ、借りた物はやはり期限までに返すのが一般社会のルール、ということは、最後に申し添えておきます。ここで紹介したことは、あくまでも考え方のひとつとして捉えていただければと思います。

執筆者

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■金子ちえ
金子ちえ
21女/金融系企業勤務/
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