ここ最近、テレビやネットで「不倫」が話題になることが多くなっています。「ゲス不倫」なんて言葉も使われていたりしますが、この不倫を含めた異性関係も離婚の大きな原因のひとつとして挙げられています。
離婚に至る原因として、先ほどの不倫といった一度の過ちがきっかけになることもあれば、一緒に暮らしていく中で小さな不満が積み重なった結果かもしれません。
このように原因としてはさまざまですが、離婚をするとなるとただ届け出をすれば終了というわけではなく、不倫が原因であれば慰謝料をどうするかであったり、子どもがいるのであれば親権であったり養育費の問題もあります。これ以外にも、マイホームを購入していればローンの返済であったり保証人のこともどうするかといったこと事前に話し合っておかないと、後々トラブルに発展してしまう可能性もあります。
今回は、離婚した時にマイホームや住宅ローンはどうなるかという点にウェイトを置いて話を進めていきたいと思います。
離婚に至った原因で多いものはなに?
本題に入る前に「離婚」する人がどれくらいいるのかやそうなるに至った原因について見ていきます。
離婚件数の推移
以前に比べると離婚することに対するハードルが下がったように感じます。
その理由として、価値観の多様化もそうですが、女性の社会進出によってある程度経済的に自立できる人が増えたといったことも挙げられるのではないでしょうか。
こういった働いている若い世代だけではなく、シニア夫婦の「熟年離婚」も一時期に比べ増えてきています。では、国内においてどれくらいの人が離婚をしているかの推移を見ていきましょう。
離婚件数 | 1950 | 1960 | 1970 | 1980 | 1990 | 2000 | 2005 | 2010 | 2015 | 2016 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 83689 | 69410 | 95937 | 141689 | 157608 | 264246 | 261917 | 251378 | 226215 | 217000 |
率(人口1000人対) | 1.01 | 0.74 | 0.93 | 1.22 | 1.28 | 2.10 | 2.08 | 1.99 | 1.81 | 1.73 |
※出典 厚生労働省 平成28年(2016年)人口動態統計の年間推移
グラフにも書いてありますが、ここにある「離婚率」というのは人口1,000人に対しての率です。婚姻件数に対しての割合ではないので、この点についてはご注意ください。
ではグラフに沿って見ていくと、1960年・1970年は時代背景等もあってか、離婚率が1を切ってます。しかし、1980年から離婚率が上昇し始めて2000年には2を超え、その後は徐々に減少して2016年(推計値)では1.73とピーク時に比べて0.4ほど減っているという結果になりました。
離婚件数も減ってきてはいますが、それと同時に人口も減少しているということも考えると単純に過去と比較するというのはこのグラフだけでは難しいです。その点について言及していくには他の複数のデータを基に記事を構成していかないといけませんので、ここでは単純に件数の推移等を確認していただければと思います。
離婚の申立てをした理由
ここからは、このセクションの本題である離婚を思い立った原因について見ていくことにしましょう。
離婚の原因 | 夫 | 妻 |
---|---|---|
1位 | 性格が合わない | 性格が合わない |
2位 | 精神的に虐待する | 生活費を渡さない |
3位 | 家族親族と折り合いが悪い | 精神的に虐待する |
4位 | 異性関係 | 暴力を振るう |
5位 | 性的不調和 | 異性関係 |
6位 | 浪費する | 浪費する |
7位 | 同居に応じない | 家庭を捨てて省みない |
8位 | 暴力を振るう | 同居に応じない |
9位 | 家庭を捨てて省みない | 性的不調和 |
10位 | 病気 | 酒を飲みすぎる |
※ 裁判所 平成27年度 司法統計年報
夫と妻のそれぞれで離婚の申立てをした動機で多いものの順に並べています。
夫・妻ともに一番多かったものが「性格が合わない」ということになっています。じゃあ、なぜ結婚したのかというツッコミを入れたくなるような動機ではありますが、一緒に暮らしている中で積もりに積もった結果がこうなったということなのでしょう。
文頭でも少し触れた「不倫」などの異性関係は夫が4位で妻が5位と比較的上位にに上がってきています。
離婚の際にトラブルになりがちな財産分与について
離婚をするにあたって、養育費や慰謝料など離婚時や離婚後の取り決めをしておくことが必要になってきます。
その中でもとくに問題が起きやすいとされている財産分与について取り上げてみます。
そもそも財産分与とはなにかというと、簡単に説明すれば結婚してから離婚するまでの間にお互いが得た財産をどうやって分けるかということです。
例えば、結婚後は夫が仕事をして妻が専業主婦をしていたとします。そして、離婚するまでの間に夫が800万円の貯金をしていた場合、この800万円は夫が働いて貯めたものであっても夫婦で形成してきた財産として財産分与の対象となります。
「妻が稼いできたものじゃないのに??」
このように思われたかもしれませんが、夫が仕事をバリバリできるのは妻が家事や育児を行なっていたからこそ貯蓄を増やすことができたとも考えられませんか。
そう考えれば、この800万円という財産は夫婦共通の財産と取れるわけです。
では、結婚している間に得た財産であれば何でもかんでも財産分与の対象になるかといえばそうではありません。一番分かりやすいところで言うと、夫婦のどちらかの親がなくなった際に発生した相続によって得た財産は、結婚している間であっても夫婦生活に関係して得られた財産とはみなされないということで対象外となってしまいます。
負債がある場合の財産分与はどうなる?
離婚する際に負債(債務)があるといった場合は財産分与にどのような影響があるのでしょうか。
結論から言うと、負債(債務)は財産分与に影響があります。
ただ、この負債(債務)の内容が結婚生活を行なっていくうえで必要であったものであれば財産分与の際に精算することが公平であると考えられているのですが、これが個人的な趣味やギャンブルなどで負った債務である場合は別になります。
先ほどの例で考えると、貯金が800万円に対して負債(債務)がなしだった場合は単純に50:50で財産分与をしますので、夫・妻ともに400万円ずつ分けるといった形になります。
しかし、負債(債務)が200万円あるのであれば貯金額の800万円から負債分を引いた600万円が財産分与の対象になるというわけです。
つまり、夫・妻それぞれに分与される額は300万円ということになります。
今の例では財産より負債(債務)が少ない「財産 > 負債」といった内容になっていましたが、これが財産より負債(債務)が多い「財産 < 負債」というような場合はどうなるのでしょうか。
離婚する際に貯金が800万円で負債が1000万円あったとします。
この例で考えるならば、貯金で負債分を賄ったとしても負債が200万円残ってしまうということになります。となると、この負債を夫と妻で負担しないといけないのではないかと思われるかもしれませんね。
答えとしては、この負債(債務)に関しては負担する必要はありません。ただ、この場合、現状として財産の状態は赤字になっていると考えられますので分与できるものはないということになってしまいます。
分与できるものがないということなので、妻が受け取る財産分与はなしということになる代わりに負債(債務)も負うことはないということになります。若干、釈然としない部分はあるかもしれませんが、この離婚が裁判までいった場合はこのような判決が出されて分与が認められないといったケースが多いようです。
住宅ローンがある場合の財産分与はどうなる?
ここまでは、財産が負債より少ない場合と多い場合といったように分かりやすい事例を用いて話を進めてきました。では、もう少し具体的な話として「住宅ローン」がある場合はどうなるかといった点について説明していきます。
住宅ローンの借入れをする際、ほとんどのケースが「夫(主債務者)・妻(連帯保証人)」または「夫(主債務者)・妻(連帯債務者)」という場合が多くなっています。
その場合の財産分与はどうなるかという話の前に、離婚したらこの連帯保証や連帯債務といった責任がどうなるかということについて説明します。
そもそも、住宅ローンの借入れをする際に銀行側は主債務者である夫とのみの契約でなく、妻が保証人になる、または連帯で債務を負うといった契約をしています。ですので、極論を言えば銀行側からすれば離婚をしたからといって、その契約をなかったことにするということはできません。
つまり、離婚しても債務を保証するまたは連帯で債務を負うという状態はなくならないということになります。
では、保証人や連帯債務者になると債務が完済されるまでずっとその責任を負わなければいけないのかというとそうではなく、別の保証人を立てるといった方法で銀行の承諾を得ることができれば保証人から外れることができます。
ただ、連帯債務の場合はマイホームを共有名義にしていたりするので、この場合はもう少しややこしい問題になってきます。
この内容を前提として、住宅ローンの残債が残っている場合の財産分与はどうなるかを見ていきましょう。
まず、パターンとしては以下の2通りが考えられます。
①マイホームの売却額(価値) > ローンの残債
②マイホームの売却額(価値) < ローンの残債
それぞれのパターンで見ていきます。
①マイホームの売却額(価値) > ローンの残債
マイホームの売却額(価値)がローンの残債より多い場合です。
計算しやすいように売却額が1800万円でローン残債が1200万円とします。この場合、マイホームを売却すれば600万円の現金が手元に残るということになります。
離婚後に売却をすれば、この600万円を財産分与する形になりますので夫・妻はそれぞれ300万円ずつを受け取るということになります。
ただ、マイホームを売却しなかった場合はどうなるかというと、例えば夫がマイホームに住み続け妻が出ていくといったケースで考えると、600万円の価値があるマイホームを夫が1人で利用するということになります。
財産分与は50:50で行われるという観点からすると、夫は妻に対して300万円を支払わなければならないということになります。
夫から妻に支払うべき300万円はどうするかというと、夫自ら用意しなければいけません。一括で支払うことができればいいのですが、そうでない場合は分割にするなどといった方法で支払う形になることが多いようです。
②マイホームの売却額(価値) < ローンの残債
①の場合とは逆でマイホームの売却額(価値)がローン残債より低い場合はどうなるのでしょうか。
先ほども少し触れましたが、この場合は住宅には価値がないと判断されるので財産分与の対象となりません。つまり、離婚時の金銭的なやりとりはなくなるということです。
ただ、住宅ローンの場合は妻が保証人あるいは連帯債務者になっていることがほとんどですので、売却した場合でもしない場合でも債務が残ってしまうということは、保証人も連帯債務もそのままになってしまうということになってしまうわけです。
どちらの場合にしても、離婚後どちらがローンの返済を行なっていくかということを協議しないといけません。
保証人であれば、別の保証人を立てるなどといった対処法があるのですが、連帯債務となるとマイホームを共有名義にしていることがほとんどですので、②のようなケースの場合は売却せずにそのままにしておくことが多いようです。
しかし、離婚してからしばらく経って売却するとなると名義人である両方の同意が必要となりますので、いざ売却する場合に連絡が取れないなどといったトラブルになるおそれがあります。
離婚後の住宅ローンの支払いが難しい場合は…
先ほどのように、収入合算して連帯債務などの条件で住宅ローンを借入れした場合、離婚後に住宅ローンの支払いが困難になってしまうケースが多々あります。
そのような不安があるのであれば、できるだけ早い段階で「任意売却」するのがいいかもしれません。
「売却してもローンの残債が残るのであれば、通常の売却でも関係ないんじゃ…」と思われるかもしれませんが、任意売却の場合、債権者である銀行側と話し合いを持って解決するという形になり、残った借金に関しての支払いは債務者の収入などを勘案して返済していくという形になります。
返済できないということで自己破産などの債務整理というのもひとつの方法ではあるのですが、仕事によっては支障が出ることも考えられますので選択するのであれば任意売却がベストではないかと思います。