経済的な理由で国民年金の支払いが難しくなることがありますよね。

そんなときは、未納のまま放置するのではなく、申請手続きをして支払いを免除してもらいましょう。今回は、国民年金の支払いが免除される条件や期間、手続き方法などをご紹介します。

国民年金は免除もできる!?

国民年金は満20歳以上60歳未満の方が加入対象となり、保険料の納付は義務となっています。

会社員の方は、給料や賞与から厚生年金保険料が差し引かれているので未納になることはなく、免除もできません。しかし、学生や自営業者などは国民年金を自分で納めなくてはいけないので、未納のまま放置している方もいるでしょう。

収入がない、失業したなどの理由で国民年金が支払えない方は、免除申請を行うことで支払いが免除されます。未納にしておくよりもメリットが多いので、免除申請について詳しく見ていきましょう。

国民年金の申請免除とは

国民年金の免除には、法定免除と申請免除、特例免除の3種類があります。

法定免除

障害基礎年金を受給している方や生活保護を受けている方が対象となります。届出をすることで、国民年金保険料の全額が免除されます。

申請免除(保険料免除制度)

経済的な理由で納付が困難な方が対象となります。

申請をして認められた場合に、保険料の全額または一部が免除されます。免除には、全額4分の3半額4分の1の4段階があり、前年所得などから対象となるかどうか計算されます。申請しても、所得が多い場合などは、不承認になることがあります。

特例免除

配偶者からの暴力(DV)を受けている方、災害を受けた方、失業した方などが対象となる特例処置です。

DVに関しては、配偶者から暴力を受けており配偶者と別居している方は、配偶者の所得の高さに関係なく、本人の所得が一定以下の場合に全額、または一部免除になります。災害や失業などの理由によって免除となる場合は、前年所得が多くても、所得にかかわらず免除してもらうことができます。

国民年金を免除したい学生の場合

所得がない方というと、まず心当たりがあるのが、学生です。

大学在学中でも20歳になると納税義務が発生するので、支払いが困難になる方は多いでしょう。しかし、残念ながら学生は保険料免除制度を利用することができません。かわりに、学生納付特例制度を利用して、支払いを猶予してもらうことができます。

学生納付特例制度とは

満20歳以上で国民年金の加入対象者になった場合でも、学生であれば申請することによって在学中の納付が猶予されます。本人の所得が下記の計算式で算出される金額以下の場合に、この制度を利用することができます。

  • 本年度の所得基準(申請者本人のみ)
    118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

家族の収入は関係なく、本人の所得のみで審査されます。

学生納付特例制度を利用して猶予してもらった期間については、過去10年にさかのぼって追納することができます。追納は義務ではないので、納めなくても問題ありませんが、追納することによって将来受け取る年金額が増えることになります。

国民年金が免除される条件とは?

ここからは、国民年金の申請免除(保険料免除制度)についてご紹介します。保険料免除申請は、経済的に保険料の納付が困難な方が対象となります。本人の所得だけではなく、世帯主や配偶者の所得についても審査され、一定額以下であれば納付が免除されます。アルバイトやニート、専業主婦の方は、本人、世帯主、配偶者、それぞれの所得が審査され、所得が以下の金額より少ない場合、免除されます。

  • 全額免除
    前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
    (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
  • 4分の3免除
    前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
    78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 半額免除
    前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
    118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 4分の1免除
    前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
    158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

扶養親族等控除額、社会保険料控除額等は、年末調整や確定申告で申告した金額で、源泉徴収票や確定申告提出書類の控えなどで確認してみてください。

国民年金保険料は、世帯主がその世帯に属する人の保険料を担い、配偶者は他方の保険料を担うという連帯義務があります。そのため、専業主婦などで所得が全くない場合でも、配偶者に十分な所得があれば、免除してもらうことができません

失業者は特例によって、本人と配偶者のみの所得審査が行われます。配偶者がいる場合は、配偶者の所得要件が失業等の特例免除の基準を満たしているかどうか審査されますが、本人の前年の所得が多くても、免除になることがあります。

国民年金免除のメリットとは

国民年金を免除するメリットについて、理解しておきましょう。

財産を差し押さえられることがない

国民年金保険料を滞納しており、日本年金機構からの督促を無視し続けていると、最終的には財産が差し押さえられることがあります。

すでに持っている預貯金や不動産、保険などが差し押さえ対象となってしまうので、未納のまま放置してしまうことは、本来とても恐ろしいことなのです。

免除期間中でも障害基礎年金・遺族基礎年金が受け取れる

国民年金を免除している期間中でも、障害基礎年金や遺族基礎年金の受け取り対象者となれば、給付金をもらうことができます。未納にしている場合はもらえないので、保険料が払えない場合は、免除申請手続きをして、万一のときのために備えましょう。

将来受け取る年金において優遇される

老後に受け取る老齢基礎年金は、受給資格期間が25年以上ないともらうことができません。

保険料の未納期間中は、この受給資格期間に算入されませんが、国民年金を免除してもらっている期間は、算入してもらえます。また、年金額を計算するときに、保険料を納めていなかったにもかかわらず、全額免除の場合、満額納めていた人の2分の1の金額で計算してもらえるというメリットもあります。

国民年金免除のデメリットとは

国民年金保険料の支払いを免除してもらうことができれば、経済的に助かりますが、デメリットについてみてみましょう。

追納しなかった場合、年金の受給額が減る

免除してもらった保険料は、後から追納することができます

追納は義務ではないので、経済状況がよくなったからと言って、請求されるわけではありません。ただし、追納しなかった場合、満額払っていた人に比べると将来受け取る年金額が少なくなります。全額免除してもらった方は、全額納付した場合の2分の1が支給されることになります。

追納する場合は加算額も支払うことになる

免除期間中の保険料を後から支払いたい場合は、当時の保険料額に加算額が上乗せされた額を支払うことになります。

そのため、免除申請せずに満額払っていた人よりも、総支払金額が多くなってしまいます免除対象になりそうだから申請するのではなく、本当に経済的に困窮している場合に活用したい制度です。また、加算額は経過年数に応じて増えるので、追納する場合は早めに払いきることが重要です。

手続きが面倒

国民年金保険料を免除してもらうためには、自分で申請手続きをしなくてはいけません。必要となる添付書類が多岐にわたり、原則毎年度手続きをすることになります。

毎年度の申請に手間がかかるため、面倒に感じられたり、忘れそうになったりすることがあります。しかし、未納にしておくよりも受けられるメリットが多いので、しっかり手続きしておきたいものです。

国民年金を免除する手続き方法

国民年金の免除の手続きは、自分で書類を作成して、提出する必要があります。

住民登録している市町村の役所の国民年金担当窓口へ申請書を提出しましょう。申請書は日本年金機構HPからプリントアウトするか、各役場の担当窓口でもらうようにしてください。直接持参する以外にも、郵送でも申し込みを受け付けています。

保険料免除制度、失業等による特例免除の場合

申請書に添付する書類は以下の通りです。

  • 国民年金手帳 または基礎年金番号通知書
  • 前年(または前々年)所得を証明する書類
    ※原則として所得を証明する書類の添付は不要です。
  • 所得の申立書(所得についての税の申告を行っていない場合)
  • 雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し(失業等による申請の場合)
    ※失業等による申請の場合(事業の廃止(廃業)または休止の届出を行っている方)
  • 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写し及びその申請時の添付書類の写し
  • 以下については、失業の状態にあることの申し立てが別途必要になります。
  • 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
  • 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し
    ※税務署等の受付印のあるものに限る。
  • 保健所への廃止届出書の控
    ※受付印のあるものに限る。
  • その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類

必ず必要なもの、場合によって必要なもの)

失業によって免除申請される方のほうが必要書類が多いですが、失業を理由とした特例免除は、前年の所得が多い場合でも受理される可能性があるため、面倒でも書類をそろえるようにしましょう。

ちなみに、退職などによる特例制度もあり、震災被災者の場合は前年所得の多さに関係なく、免除されることがあります。申請は、原則として毎年度必要となり、1回出したらずっと免除され続けるわけではありません。次年度も免除を希望する場合は、その都度申請を忘れないようにしましょう。もし、不明点があれば、最寄りの年金事務所などで相談してみてください。

学生納付特例制度の場合

学生が学生納付特例制度を利用するときは、市役所の他に、年金事務所や在学中の学校でも手続き申請することができます。

必要書類は、以下の2つです。

  • 国民年金手帳
  • 学生等であることまたは学生等であったことを証明する書類

保険料免除制度、失業等による特例免除同様、郵送での手続きも可能です。

国民年金が免除できる期間とは?

国民年金の免除申請期間は、納付期限から過去2年間までとなっています。

過去に未納にしている保険料があっても、さかのぼって免除申請をすることができるので、心当たりのある方は、今からでも免除申請をしましょう。申請を先延ばしにすればするほど、免除の対象となる期間が短くなってしまいます。免除の申請が遅れると、障害基礎年金、遺族基礎年金が受給できない恐れもあるので、早めの手続きをおすすめします。

また、学生納付特例も過去2年にさかのぼって申請することができます。

申請書を提出するときは、年度ごとの提出が求められます。複数年度の申請をしたい場合は、年度ごとに提出が必要です。また、過去に免除申請が通らなかった年度においても、再申請することができます

却下された後に税金の修正申告をして所得が変わった、離婚したり世帯主が変わったなどの場合です。該当する方は、年金事務所に相談してみましょう。

国民年金の免除期間は延長できる?

国民年金の免除をしてもらった後で、経済的な事情により免除期間を延長してほしい場合もありますよね。

国民年金の免除申請は、毎年度必要なので、延長してほしいときは次年度の申請を行うことになります。延長申請手続きが遅れて、未納状態にならないよう、早めに申請するようにしてください。

国民年金を免除してもらった後の追納

国民年金を免除してもらった後で、免除期間の保険料を払えるようになったら追から支払うことができます。

追納は義務ではないので、督促されることはありませんが、追納することで将来受け取る年金額が増えるなどのメリットがあります。将来の年金額が気になる方は、追納を検討しましょう。

追加で支払える期間は、過去10年以内の免除申請期間に対してです。それ以前の免除期間については、追納することができません。当時の保険料に経過期間に応じた加算額をプラスで支払うことがあるので、免除申請しなかった場合よりも最終的な納付金額は多くなってしまいます。

しかし、追納することで、税金が戻ってくるケースもあります

追納保険料も社会保険料控除の対象となるため、確定申告または年末調整の手続きをすることで、払いすぎた所得税や住民税が返ってくることがあります。

追納を希望する際は、年金事務所で申し込みをし、納付書を使用して支払うことになります。ちなみに、口座振替やクレジットカードで支払うことはできません。

払えない場合は免除申請手続きをしよう

今回は、国民年金の免除に関して解説しました。再度、ポイントをご紹介します。

  • 国民年金保険料は、経済的な理由で免除申請することができる
  • 免除申請には、全額、4分の3、半額、4分の1の4段階があり、前年の所得などから対象になるかどうか審査される
  • 経済的な理由以外にも、障害基礎年金や生活保護受給者、配偶者から暴力を受けている方、震災被災者も免除の対象となる
  • 学生は国民年金保険料を免除してもらうことができないが、代わりに学生納付特例制度を利用することができる
  • 国民年金が免除される条件は、前年所得が一定以下であること
  • 国民年金免除のメリットは
    • 財産を差し押さえられることがないこと
    • 免除期間中でも障害基礎年金・遺族基礎年金が受け取れること
    • 未納に比べて、将来受け取る年金において優遇されること
  • 国民年金免除のデメリットは
    • 追納しなかった場合、年金の受給額が減ること
    • 追納する場合は加算額も支払うので、総支払額が多くなること
    • 手続きが面倒なこと
  • 免除できる期間は、過去2年にさかのぼって申請することが可能
  • 免除期間を延長してほしい場合は、毎年度申請が必要になる
  • 追納は過去10年にさかのぼって支払うことができる

収入の少ない方や失業した方は、経済的な事情で国民年金保険料の支払いが困難になることがあります。

その場合は、未納のまま放置するのではなく、免除申請手続きをするようにしましょう。保険料を免除しても障害基礎年金や遺族基礎年金の受給対象者となり、未納に比べて、将来受け取る年金面で有利になります。

手続きが面倒、あるいは承認されるかどうか不安であっても、まずは申請手続きをしてみましょう。