プロ野球選手。大活躍をすると毎年のこの季節に、「来年は1億!」というニュースのもと、万年の笑顔が映し出されます。このニュースを、「契約更改」といい、例年シーズンの終わった秋の風物詩でもあります。
ところでプロ野球選手は、この1億円を、そのまま使えるのでしょうか。今日は、プロ野球選手の「年棒」と「給料」の違いについて考えてみましょう。
プロ野球選手は個人事業主
プロ野球選手は、球団と1年ごとの契約関係を結んだ個人事業主に該当します(長年、活躍した選手は、2年以上の『複数年契約』を結ぶ場合もあります)。残業代はもちろん、会社人の皆様が夏と冬に楽しみにしている賞与(ボーナス)もありません。
活躍しようが期待を裏切ろうが、その年の年棒が増減することはありません。
その年の成績は、次年度の年棒を決める「査定」によって判断されます。選手によっては、「ホームラン〇〇本売ったらいくら加算する」という出来高(インセンティブ)を提示される場合もあります。
個人事業主なので、プロ野球選手はそれぞれが経営者です。公的年金も、健康保険も、住民税も、球団から貰った年棒のなかから支払います。個人でフィジカルトレーナーをつけている場合も、自身の年棒から支払う場合がほとんどです。
大幅減棒の決まり文句「住民税が払えない!」
そんな個人事業主のプロ野球選手。
成績不良により翌年の年棒をどかんと下げられた際に、記者会見などで「住民税が払えない!」という言葉を聞くことがあります。それまで億を超える年棒を手にしていた選手ほど、この住民税の心配をします。なぜでしょうか。
詳しい計算は省きますが、住民税は前年の所得をもとに計算されます。
プロ野球の選手に当てはめると、2015年に高い給料を貰っていた選手が2016年に大減棒を受けたとしましょう。
2015年の高い給料のもと、計算された住民税は、2016年の年棒から徴収されます。つまり、高い年棒をもとに定められた大きな額を、減棒後のお金から削られる、そこには厳しい勝負師の世界を見せつけられますね。
年棒はいつ貰えるの?
ところで、年棒はどのように貰うのでしょうか。
あるプロ野球球団によれば、実は会社員の方と同様、毎月に分けて口座に振り込まれるそうです。給料日みたいですね。未成年の選手などは、お金の使い方に慣れていないため、離れたご両親に振り込み、そこから「お小遣い」という方法で選手のお財布に入るケースも多いとか。
年棒とは異なる「契約金」
一方で、プロ野球選手には年棒とは異なる「契約金」というものが存在します。
秋に「ドラフト会議」が行われた直後に、スポーツニュースなどで「契約金1億円、年棒1,500万円」と報じられるのを聞いたことがあるでしょう。年棒とは別に貰えるこの契約金とは、どのようなものでしょうか。
契約金は、「プロ野球球団が選手と契約を結ぶにあたり、支払う一時金」としての性格を有します。
成績や選手としての実働年数による返還義務はありません。選手はそのお金を貯金し、現役引退後の生活費にあてる方も多いようです。
また、契約金を貰った時に、自身を育ててくれた少年野球の指導者や、高校野球の監督などを食事や旅行に誘い、感謝の意を伝えるケースも多いという話を聞いたことがあります。
契約金と移籍金の違い
プロ野球選手になる時に受け取る契約金に比べ、現役選手が移籍をする時に発生するのが「移籍金」です。
日本のプロ野球は特殊で、原則移籍は何年間か活躍した選手が自由に移籍する権利を得ます(FA、といいます)。このFAでは移籍金は発生しません。
そのため、移籍金と言えばプロ野球よりも、サッカー選手の印象が強いですね。最近は野球選手でもアメリカの大リーグに移籍するときに、移籍金の発生する「ポスティングシステム」を利用することが多くなっています。
この移籍金。契約金との最大の違いは、「お金が選手個人には入らない」ということ。
移籍金は選手ではなく、「選手が移籍直前まで在籍していた球団」に入ります。プロ野球にはまだ馴染みが薄いですが、プロサッカークラブなどで「選手を若い頃より育て上げ、その選手にかけた育成費(投資金額)以上の移籍金を受け取る」ことで球団経営をしているところも多いものです。
その他にプロ野球選手が受け取る「お金」とは
プロ野球選手が受け取るお金は他にもあります。
たとえば「スポンサー料」です。選手は最新のバットやスパイク、サングラスなどをしていますが、これはスポンサー企業からの提供で、宣伝費を受け取っている選手もいます。また、子どもたちの憧れである選手の立場を活かして、企業の看板役となっている選手も目立ちます。
プロ野球選手をめぐる「お金」のあれこれ。とても興味深いですね。